地域ケアステーション はらぺこスパイス

奥村 圭子 さん

(杉浦医員/地域ケアステーション
はらぺこスパイス室長 管理栄養士 介護支援専門員)

スギ浦医院/地域ケアステーション はらぺこスパイス(通称 はらスパ)は、医療法人八事の森 杉浦医院の栄養部門として平成27年10月から準備をはじめ、平成28年4月にオープンしました。コンセプトは、「望む暮らしのなかでの食の支援」。主に、ご本人の望む暮らしや地域や福祉を栄養や食でどのように支えるか、プライマリヘルスケアを基盤とした地域での栄養支援を中心に活動をしています。
私たちの事業内容は、主に栄養指導事業(医療保険、介護保険)、地域活性化活動(健康づくり、予防)、人材育成の3つあります。人員体制は、管理栄養士をはじめとする理学療法士や看護師など多職種が、事業ニーズに応じて出入り自由な体制をとっているため、全員非常勤です。さらに事業内容によってワーキンググループが随時出来たり見直したりを繰り返し柔軟的に行っています。次に、各事業の概要を簡単に説明致します。


1.栄養指導事業(医療保険、介護保険)

医療保険や介護保険を使った訪問栄養指導のほか、外来栄養指導や集団栄養指導を行っています。杉浦医院だけではなく、他院とのクリニックとも契約を行い、事業ができるよう整備しているところです。これにより、名古屋市昭和区や千種区だけではなく、知多半島や三河地区などの栄養士も訪問しやすい環境をととのえています。
 栄養指導事業ワーキンググループは、依頼くださる医師の指示のもと、ケアマネジャーのケアプランを基に多職種と連携をとりながら栄養業務を行います。主に対象者の疾患の治療を目的に食の支援に入りますが、在宅栄養支援の場合は、食環境支援から入ることが多くあります。それは、食べられない理由のなかで、生活機能が低下している場合もあり、疾患とは限らないからです。その場合、管理栄養士は、本人の食生活機能が低下している理由を、ご本人やご家族、医師やケアマネや多職種のかたと話し合い、食環境を整え、同時に治療的な病態栄養学を駆使し支援していきます。そのため、医療的な知識から介護保険の仕組みなど幅広い知識や技術、また、対話技術なども必要となります。また、管理栄養士1人では解決できる課題はなく、チームとしての管理栄養士の質の向上を常に求められます。
 しかし、管理栄養士はつい1人で悩みを抱え孤立しがちであるとも聞きます。この対策として、定期的な多職種でのミーティングや勉強会、意見交換会などに参加することで栄養士だけの考えで突き進んでしまったり、逆に孤立してしまわないように支援体制も整えています。また、愛知県栄養士会の訪問栄養士の育成事業とも連携しながら、他の栄養ケアステーションとの横のつながりも大切にしています。

2.地域活性化活動(健康づくり、予防)

地域活性化の活動場所は、名古屋市昭和区にある「いりなか商店街」です。ここでは、年間2,3回ある地域のお祭りがあります。はらスパも毎年参加し、「健康づくり」をテーマに管理栄養士のブースをだしています。ここでは、管理栄養士だけが行うのではなく、歯科クリニックやアロマの先生や地域包括支援センターとのコラボなどと、多機関や多業種で連携して行っていくのが特徴です。
 内容を少しご紹介します。地域のイベントやお祭りに参加した地域住民の方に、了解を得て簡単な栄養チェックを行っています。例えば、栄養の問診、握力測定、体重測定、食欲チェックなどを行います。毎回、定員50名としていますが、それを大きく上回る方々が参加くださいます。この栄養チェックの結果をもとに、栄養カウンセリングを行っています。これを体験し分かった事は、お祭りやイベントに参加できるぐらい元気だと思っていたのですが、深刻な疾患が絡む栄養の悩みを抱える人が必ず1人はいることです。また、病院には行きたくないが、誰かに話をきいてもらいたかったと言う方もいます。これら病院やクリニックでは経験出来ない貴重な体験は、ボランティアで参加いただいた管理栄養士も勉強になるようで、はらスパの研修の一環にもしています。
 しかし、課題が1つあります。それは、ここで頂いた相談内容は、今までどこにも繋げることが出来ていないということです。そのため今後、はらスパでは、地域の保健室的な栄養相談窓口を広く展開していきたいと考えています。 その他、最近は地域ケア会議など行政からの依頼も出始めております。今後は、行政との健康づくりや地域づくり、総合事業や福祉での栄養活動も増やしていきたいと思っています。

3.地域活性化活動(健康づくり、予防)

セルフメディケーションを目的とした、地域の健康教室や専門職向けの人材育成プログラムなどを行っています。これは、地域包括ケアシステムの「住み慣れた地域で最期まで住み続ける」ための一つの方法でもあります。また、はらスパのコンセプトにも通じており、そのための人材育成を行っています。
 御自宅に訪問する管理栄養士の育成は、大学でのカリキュラムも殆どないため、愛知県栄養士会と連携をしながら行っています。例えば、愛知県栄養士会の訪問栄養士に関する研修会をお勧めしたり、また、栄養士会に入っていない人向けには、愛知県栄養士会への研修会を勧めるだけではなく、はらスパの方でも、書類の書き方から杉浦医院医師と協働しニーズに合わせたカリキュラムを揃えています。
 また、はらスパは、日本栄養士会のモデル事業である栄養ケアステーションの認定施設としても登録されていますので、栄養ケアステーション同士の連携を活発に行い、人材だけではなく組織としての質の向上も目指していきたいと思っています。


今回は、主に3つの事業についてご紹介させていただきました。おかげさまで、皆さまのお力添えのなかで、現在も、様々な場面での地域の多機関多業種との繋がりも広がっております。1人だけの管理栄養士だけでは、地域で困っている人の声をキャッチし良い形に支援することはできません。これらの事業を通じ、地域ケアステムに貢献できる栄養ケアステーションへ成長していきたいと思っています。 これからも、ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。

奥村 圭子