医療部会第1回研修会報告

日時:令和3年7月31日(土)10:30~14:30
場所:Zoomウェビナーによるライブ配信
参加者:143名
内容:

午前:『管理栄養士が論文を書いてみた 現場からの論文執筆体験談
       ~中医協から診療報酬 改定への軌跡~』
   講師:(公社)日本栄養士会医療職域常任事業推進委員 副委員長
       (福)恩賜財団 済生会支部 群馬県済生会前橋病院 栄養科 係長 宮崎 純一先生

 午後:『カルテ記録のスキルアップ ~多職種から見られています、あなたの記録~』
   講師:(公社)日本栄養士会医療職域常任事業推進委員 副委員長
        国立病院機構 渋川医療センター 栄養管理室長 須永 将広先生


午前の部は講師の宮崎先生ご自身が、実際に論文作成に至った経緯から初心者目線でお話していただいた。「論文書いてみよっか」と軽く勧められたことから始まり、論文検索や研究デザインを学び、統計は諸先輩方に指導を仰ぎ、エビデンスでもある研修会では全国へ啓蒙活動を行い、診療報酬に関連させるのに必須であった公の雑誌(日本栄養士会雑誌)に掲載される目標を達成。短期間での診療報酬改定への軌跡は映画さながらのストーリーだった。
 論文とは、あたり前のことをあたり前に実証することであり、他職種へ効果的にアピールでき、エビデンスを示すことができる。しかし、論文のハードルは高い。学会発表から行ってみるのはどうか。まず自分の中での成果をまとめたり、日常から題材を探したりなど、普段の業務を整理して形にすることから始めても良い。一歩目がなかなか踏み出せない私たちに初めてでも頑張れる勇気と、より具体的なアドバイスと今後に向けた熱いエールをいただいた。

午後の部
 「他職種から見られている、という視点で診療録(カルテ)を書いていますか?」 記録を集積しデータベース化、それらを結合・分析することで医療の効率化やサービスの向上ができる。すでに介護分野においてはデータの蓄積が進められているが、医療分野におけるレセプトデータに栄養関連情報は無い。栄養アセスメント結果としての栄養診断(評価)も対象とすることで、有機的な連携ツールとして医療-介護-地域などで利活用できるようにすることが必要。ビッグデータを作るために全・管理栄養士が栄養ケアプロセス(PES)を診療録(カルテ)に記録し評価を上げられるようにしていきたい。
 診療録(カルテ)記録では①データ抽出:問題点にいかに気づけるか、それを聞き出せるか・引き出せるか。②アセスメント:そのデータをもとに本質的な原因・要因を探る。この管理栄養士スキルが他職種に負けない一番の『肝』である。「栄養診断の根拠のPES記載」だけを見て混乱しないように。アセスメントからPESへ行けば簡単にできるはず。PES記録を学んでいない人が多いので、みんなで学び問題意識を共有する。スキルとは 適切にアセスメントする能力(記憶がいい、電子カルテに長けているなど)、業務のスピード、自ら考えて診る力を養うこと。
 他職種から「管理栄養士にお願いしよう」と信頼されるかどうかは、栄養アセスメント力と管理栄養士としての思考や行為を「適正な内容」で診療録(カルテ)記録に残すことが肝要である。
 記録の必要性と方法、理想的な記録内容を私たちに示していただいた。本来なら症例ごとにグループディスカッションができるとより理解が深められたが、今回は個人で行い是非身に付けていただきたい。アンケートにも多く寄せられていたように、明日からの業務に反映させていくことができる素晴らしい内容の講演でした。

報告:豊田新成病院 岩間克氏