日時:2019年6月15日(土) 10:30~15:45
場所:名古屋通信ビル
内容:
(前半の部) 10:30~12:00
講演1-1 演題:「腎臓病の栄養食事指導」
講師:増子記念病院 管理栄養士 朝倉洋平 先生
講演1-2 演題:「透析患者への栄養食事指導」
講師:偕行会セントラルクリニック 管理栄養士 高橋恵理香 先生
(後半の部) 13:30~15:45
講演2 「腎臓病のガイドライン」
講師:名古屋大学大学院医学系研究科病態内科学講座腎臓内科
循環器・腎臓・糖尿病(CKD)先進診療システム学寄附講座
安田宜成 先生
参加者:157名(会員151名、県外3名、非会員3名)
2019年6月15日(土)名古屋通信ビルにおきまして第1回医療部会研修会が実施されました。
前半の講演1-1では増子記念病院の朝倉洋平先生をお招きし、腎臓病の原疾患の病態把握と調理実習の実際についてご講演いただきました。
CKDは原疾患に関わらず出現する病態は共通している。そのため食事療法の内容に違いはないが、患者個々の病態や腎機能低下の程度によりその制限の程度は異なるということ。 原疾患のひとつIgA腎症について説明し、CKDの病態と食事療法の効果について表されました。低たんぱく米は献立が立てやすいが患者の受け入れは難しいのが現状。いろいろな種類を試し1日1回から始めるのもいいと勧められました。
よく質問にもあがる、高齢者のサルコペニア・フレイルにおけるたんぱく質制限の程度は、各学会において現在進行形で検討されているということです。
調理実習では参加者の予後を評価し、保存療法が継続できていると報告されました。CKDサポートチームにおいては教室や実習を多職種でフォローし、待ち時間を利用した患者側に立った教室運営を行っている。管理栄養士はそのような場を設けることができると実例によって表され、管理栄養士がさらに幅広く活動することができることを教えていただきました。
前半の講演1-2では偕行会セントラルクリニックの高橋恵理香先生をお招きし、腎臓の働きから透析食事療法の実際についてご講演いただきました。
患者との関係を良好に。栄養士は制限するひとではなく、これだったら食べていいと提案できる栄養士でいたいということ。摂取量は画一的でなく個人対応として病態を見て、臨機応変に対応することを患者に理解してもらい、悪い時だけでなく定期的にベッドサイドに伺い他職種にも情報共有を行っている。栄養士から見ると多くの患者の中のひとりでも患者からはたった一人の担当栄養士であることを念頭に指導にあたっている。
お酢に関しては砂糖も塩も入っている『かんたん酢』や『おいしい酢』を使っているひとも多い為注意している。調理実習では計量を体験し簡単でおいしいメニューを提案しクックパッドにもアップされている。
透析食では体重が身で増えたか水で増えたかにより、制限するより食べてくださいという場合も多い。減塩塩や減塩つゆはナトリウムの代わりにカリウムが多くなっているものがあり腎不全には注意。リンのコントロールにはタンパク質の適正量摂取が必要なため肉・魚・卵・豆製品を減らしすぎないこと。添加物のリンを全く摂らないのは不可能、加工食品に偏らず服薬のタイミングに合わせるなどの工夫をする。ときには食事の写真を撮ってきてもらって実際を把握するなどポイントをもって栄養指導の実例を教えていただきました。改めて管理栄養士としての栄養指導の本質を考える機会になりました。
後半の講演2ではCKD診療ガイドライン2018の改訂に携わられた名古屋大学大学院の安田宜成先生をお招きし、ご講演いただきました。
腎機能低下の早期発見について。透析導入を防ぐにはGFR20では遅い、60くらいで介入しないといけない。筋肉量に影響されるのでクレアチニンだけではなくGFRをしっかり見ること。糖尿病がある場合はとくに尿中アルブミン検査が有効。
CKDの食事療法について。指導においてのデータは改善でなく悪くなっていないことを褒めることが改善につながっている。リンの制限を行うとよいが実践困難なケースが多い。過度のたんぱく制限は低栄養となり危険な為、エネルギーをしっかり摂ってアミノ酸スコアを高くすること。高血圧、脂質異常症での腎機能低下も多くみられる。75歳以上は高齢者の安全性を考慮し、140/90mmHgと定めて降圧目標を緩やかにして過降圧への注意を指摘している。腎臓を守るための降圧薬使用による高カリウム血症・脱水には栄養指導が必要。
糖尿病性腎症を含めた血管合併症の発症・進行抑制には多因子介入(体重管理、生活習慣修正、血糖・血圧・脂質の適切管理)による集約的治療が推奨されている。
最後に管理栄養士には、かかりつけ医によるCKDチーム医療へ腎臓病療養指導士として参加し治療に貢献していただきたいと強く要望されました。
多くの研究・症例などのエビデンスをもってご説明していただき、今後の管理栄養士の可能性と医師からの期待を実感するたいへん有意義な研修会となりました。
報告者:総合青山病院 岩間 克氏